深呼吸クラブ・ヘッドメニュー
 
回転する遊び心


エッセイに関係する映像です

 メリーゴーラウンド。この遊具は、日本の遊園地ではどこでも見かける。英語のメリー(Merry)とは、愉快な、陽気な、浮き浮きした、という意味のほか、心地いいという意味もある。メリークリスマスのメリーでもある。意訳だが、メリーゴーラウンドは、「木馬に乗って心地よさを回転させる遊具」ではなかろうか。数年前にパリヘ行ったとき、考えさせられたことがある。観光客があふれるシャンゼリーゼ通りの外れにある新都市圈。街全体が古い建築物で満たされているパリの中で、その一角は異様な風景がひろがっていた。

 サイケデリックなデザインのマンションや、近代建築の粋を集めたようなオフィスビル群が整然と建っている新都市圈。その中央部分に新凱旋門がニョキッと屹立し、門の前に大きな広場があった。両サイドには無機質の壁を持つ超高層オフィスビルが聳えている。その広場に、なんとメリーゴーラウンドがあった。私はおもわず感嘆の声をもらした。そこは遊園地ではなくオフィスビルの谷間である。ということは、パリのサラリーマンやOLたちは、昼の休憩のときに、回転木馬にまたがっているのか。朝夕の通勤時には、回転木馬を横目に見ながら歩いているのか……。

 スイス・ジュネーブの旧市街を歩いたときにも、小さな広場でメリーゴーラウンドを見つけた。そこも遊園地ではなく、どこにでもある広場であり、カフェや貴金属の店が並ぶ古い街並みの一角だった。ヨーロッパでは、日常生活の風景の中に、回転木馬が見事に溶け込んでいる。回転木馬に乗っているパリやジュネーブの大人たちは、昼休みには遊び心を心地よく回転させているのかもしれない。無機質な壁にかこまれ、効率主義を求められる仕事場であるオフィスビル。その谷間で、回転木馬が遊び心をいざなっているのだ。心地よさを回転させているメリーゴーラウンドは、心の日常風景に彩りを与えているのだろう。

 生活風景の中での遊び心は、斬新な創造力や豊かな発想力を育て、新しい文化の背骨になってゆくだろう。成熟した素敵な大人とは、この遊び心をもっている人ではないだろうか。

深呼吸クラブ・デコレーション