深呼吸クラブ・ヘッドメニュー
 
バンダナの再会


エッセイに関係する写真です

 この小さな物語は、旅先で一枚の布が結んだ旅人の心の輪の話である。過日、ニュージーランドのサザンアルプスと呼ばれる山脈の中を同行者と歩いたときのこと。氷河湖のほとりで、私たちはお昼の休息をとっていた。そこは、秀峰マウント・クックを望む絶好の展望地。七十六歳になるYさんは、赤いTシャツに青色のバンダナという若い服装だった。そこへ、半ズボン姿の若い二人の白人女性が通りかかった。二人は、しげしげとバンダナ姿のYさんを見つめ、ひそひそと話し合っている。後ろから前から、二人はYさんを眺め、「もしかしてヒマラヤヘ行ったことがありますか?」と尋ねてきた。「イエス」と答えた瞬間、二人は跳び上がらんばかりに驚き、喜んだ。「アンビリーバボー!・ワンダフルー!」。数限りない感嘆の形容詞が二人の口から出てきた。

 Yさんは、一年ほど前、私とともにヒマラヤでトレッキングの旅を楽しんだ。
 あるキャンプサイトの夜、現地のスタッフたちと歌や踊りの宴を開いたのだが、
 若い女性二人は、たまたま同じ場所に居合わせたという。Yさんは、ヒマラヤの宴でも青いバンダナを粋に巻いていた。彼女たちは、その姿を覚えていたのだ。聞くと、カナダのバンクーバーからの旅だという。彼女たちも私たちも、ヒマラヤから一旦帰国し、再び南半球のニュージーランドで再会したのである。

 旅には、ハプニングがつきものである。辛いハプニングもあれば、思い出したくない出来事も起こる。でもこのような奇跡にも近い、心温まるハプニングは大歓迎である。ニュージーランドの山奥で、一枚の布が日本人とカナダ人の心に、ヒマラヤでの思い出というアルバムを開かせたのだから……。Yさんの背丈は両サイドの女性の胸くらい。ほほえみながら腕を組んで記念撮影のポーズをとるYさんを見ながら思った。ハプニングはかくも愉快なほどに、人生に彩りを与えてくれるものかと。でも、愉快なハプニングは、家の中で待っていても訪れてくれないものだ。七十六歳になっても積極的に海外の山旅をするYさんのように、服装だけでなく、心が若く行動的な人の扉をこそ、ノックしてくれるのである。

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