深呼吸クラブ・ヘッドメニュー
 
温かさを包む布


エッセイに関係する写真です

 アジアでローカルバスに乗ると、田舎への土産でパンパンに膨れた袋を提げた人たちと出会う。家人への、隣近所へのお土産。中には生きているニワトリが入っていたりもする。その袋は手垢にまみれている。鮮やかな原色だったはずの赤や青もあせている。バスが揺れるとホコリさえ出てくる。でもそこから、故郷への温かい気持ちも一緒ににおい立ってくる。

 先月、国際線の機内誌で各国で使われている袋や布の記事を読んだ。ウズベキスタンには、ナン(小麦のパン)を包むダスタルハーンがある。南米のボリビアには、コカの葉を包んで運ぶインクーニャがある。供物をタブラックという袋で包むのはバリ島の習慣。ブータンではブンディ、韓国ではポジャギ、イランはボグジエ……。日本でいえば風呂敷だ。私が子供の頃は、盛装をした母親たちの小脇には必ず風呂敷があった。家への訪問客が玄関先で、風呂敷の結び目をほどくとき、子供の私はワクワクしていた。食べ物だったりすると、和服姿の女性がより一層美人にも見えた。

 風呂敷は、外国の人への土産にも重宝している。相手は、日本の季節感があふれるデザインの風呂敷をさりげなく自分の身の回りに取り入れてくれる。カンボジアの女性ガイドに渡したときには、彼女はそのまますっと首に巻いてくれた。スカーフになった。チベットで知り合って晩ご飯をご馳走になった人の家では、翌朝テーブルクロスになっていた。インドでは、お土産を安くしてくれた店の主人に渡し、店の壁掛けに変身した。「包む布」そのものが立派な贈り物になったのだ。

 海外の免税店で土産のチョコレートをまとめ買いする日本人旅行者も多い。でも本当に届けたいのは心。たとえ石ころ一つであっても、温かい心の袋に包まれていれば必ず相手の心に響くだろう。土産を包む袋や布は、人々の心の体温でほかほかしている。やわらかい結び目からは、人が人を思うやさしさが伝わる。普段の生活の中でも、相手への気持ちを包みこむ心の袋の数を増やしてゆけたら素晴らしい。

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