深呼吸クラブ・ヘッドメニュー
 
ヒマラヤに魅せられた人びと(ガイアサプリメントの国ネパール2)


エッセイに関係する映像です

 友人・秋田吉祥、前回の連載エッセイにて、ネパールという国の持つ魅力は地球(ガイア)が秘めている、人間の心身への効果ある栄養補助剤(サプリメント)を多く秘めていることではないかと書いた。山岳人以外にも、その魅力に取り付かれた人は少なくない。秋田吉祥氏一私の友人もその一人である。

 今から20年弱前、家族でネパールに移住した。と言っても、奥さんはネワール族なので里帰り…。当初は、曼荼羅やお釈迦様の誕生仏などの制作を主に手がけていた。彼の美的感覚は、師と仰ぐ西村公朝先生も絶賛するほどである。西村氏は、戦後京都の三十三間堂の仏群の修復をはじめ、皇室にも奏上するほどの仏師である。大阪のお寺の息子として生まれた秋田氏は、何故か音楽の道へと進むことになる。それも、米軍キャンプでのジャズピアニストとして活躍した。現在も、カトマンズの日本人会コーラス部の伴奏を務めたり、お釈迦様生誕地ルンビニでの国際音楽コンサートを主宰したりしている。また、カトマンズ市内の主だったホテルのピアノの調律も彼の手によるものだ。

 さらに、多才な彼は独自で編み出した理論に基づく、身体の矯正術を会得し、カトマンズ市内にクリニックを開業している。各国の大使館員や政府の高官やその家族が、クリニックを訪れる患者である。

心の美的バランス

 秋田氏が仏画や仏像を評価する際によく□にされる言葉が、「バランス」である。ピアノの調律でも同じ感覚が必要とされるらしい。芸術の世界において、製作者や創作者の心が乱れた状態での作品は、その乱れが必ず浮かび上がってくるらしい。 仏教美術や音の調律の世界で天性の才能を発揮していた秋田氏が、人間の身体の調和状態に関心が向くのは、至極当然だったのだろう。ヒマラヤの山麓を訪れる世界各国からのトレッカー達や、30を超えるネバールの少数民族達が往来する、カトマンズのバザールで彼は何を思索してきたのだろう。

ハーモニーを奏でる歩き方

 バザールでの彼の着眼点は、「歩き方」にあった。人種が違えば肌の色、言葉の差異が当然生まれてくる。さらに民族がその遺伝子によって伝承する、体格、骨格、食生活、そしてその背後には、色とりどりの文化がある。秋田氏は、個人個人の歩き方に注目し、身体が素晴らしいハーモニーを奏でる歩き方が、健康と長寿の秘訣であると仮説をたてた。日本から医学や健康学の書籍を多数取り寄せ、さらに、インドやアジアの伝統医療の根本精神も現場で直かに体験した。世界中の民族が往来する国際都市カトマンズで開業するクリニックには欧米やアジア各地の国籍の患者が集う。

 世界のさまざまな民族の身体を診てきた彼は、最近の日本人の「歩き方」を心配している。日本人の多くが「軸のない歩き方」をしている、と言うのだ。大地との接点である足裏から股関節、そして背骨、首、頭に至るラインに「筋がない」のだそうだ。 確かに山の世界においても、どこか「シャンとしない」歩き方の人が増えてきたようにも思える。これは、骨格や体型だけの理由ではなく、もっと他に原因を求めるべきなのでは、と秋田氏は言う。「軸が無い」という言葉の前後には、もしかすると「日本の政治」はもとより、「生き様」や「人生観」などの単語が見え隠れしているのではないだろうか…。

深呼吸クラブ・デコレーション